有料老人ホームで働く職種として、忘れてはいけないのが管理栄養士の存在だ。人間は年齢を重ねていくほど、噛む力や飲み込む力が弱くなっていく。特に喉は、呼吸や食べ物の通り道として大事な役割をしており、全身の筋肉同様衰え始めるのが40代からといわれている。むせやせき込み、飲む力の衰えなど加齢とともに症状が現れ、食事中の誤嚥の危険性もあり、管理栄養士の仕事はとても重要だ。では一旦、有料老人ホームで働く40代の女性管理栄養士の話をしよう。
彼女は約15年前から同施設で働き始めたが、その頃と現在では介護食の内容が違ってきたという。透析や糖尿病、心臓病など、個人の体調や持病によって、より細かく対応するようになってきたらしい。実際に同施設では、入所や通所合わせて100人を超える利用者の持病や好みによって、食事内容を調整している。基準となるメニューから、量や柔らかさ、塩分などを増減させているのだ。また年を取っても食事を楽しみたいという高齢者の思いを叶えるため、見た目にも気を配るようになったそうだ。食事の量が多く見えるときは、皿数を減らして食欲が出るよう工夫している。食べ物を柔らかくするためにミキサーにかける時は、複数の食材をいっぺんに混ぜるのではなく、彩りよくするため食材ごとに分けてかけるという手間も惜しまない。
認知症などによって料理の美しい盛り付けを理解できない高齢者もいるらしいが、それでも食事を提供する側として見た目のおいしそうなものを食べてほしいと彼女は話す。このように管理栄養士は、食の充実により高齢者の介護を支えている。